夜勤・交代勤務を生き抜く完全ガイド | 装備編
立ち仕事を楽にするインソール|夜勤の足の疲れ・むくみ対策と、夜勤者だけがハマる厚みの罠
シフトの後半、足の裏がジンジンして体重をかける場所を探してしまう。明けに靴を脱いだら靴下の跡がくっきり残っている。夜勤の立ち仕事で足が終わっていくのは、体力の問題ではありません。足の裏の狭い範囲に、体重が集中し続けているからです。そしてその集中を配り直せるのが、靴の中に入っている一枚の板——インソールです。
SECTION 01
結論|立ち仕事のインソールは「やわらかさ」ではなく「面積」と「容積」で選ぶ
売り場でいちばん目立つのは、厚くてふかふかした低反発タイプです。手で押すと沈み込むので、店頭では圧倒的に気持ちよく感じます。ところが立ちっぱなしの8時間で最初に脱落するのが、たいていこのタイプです。
理由は単純で、やわらかい素材の上では足がわずかに沈み、沈んだぶん左右に微妙に揺れます。この揺れを止めるために、ふくらはぎと足裏の細かい筋肉がずっと働き続ける。やわらかさは衝撃を減らすかわりに、安定を削るのです。歩き回る仕事なら衝撃の低減が効きますが、その場に立ち続ける仕事では、削られた安定のほうが先に効いてきます。
そして夜勤者には、もうひとつ固有の事情があります。足は勤務中ずっと少しずつ膨らんでいくのに、夜勤者はその「いちばん膨らんだ時間帯」に、まだ現場に立っている。厚いインソールは、靴の中の限られた高さを最初から食ってしまうので、勤務の後半で足の逃げ場をなくします。
この記事で決める4つのこと
- いま履いている靴の純正の中敷きを抜くか、残すか(結論を先に言えば、原則は抜きます)
- 自分の痛みが踵・土踏まず・指の付け根・むくみのどれで、必要な機能は何か
- 7タイプのうちどのタイプを買うか、そして何ミリのものを選ぶか
- インソールでは片づかないので、別の手段に回すべき問題はどれか
前回の第32回・ワークシューズと安全靴の選び方では「靴そのもの」を扱いました。今回はその続きで、靴を買い替えずに変えられる唯一の中身を扱います。順番としては、靴が明らかに合っていない場合は靴が先、靴はそこそこ合っているのに疲れるならインソールが先です。
SECTION 02
なぜ足が痛むのか|体重は変わらない、変わるのは圧の集中
8時間立っていても、体重は朝と夜で変わりません。変わるのは、その体重を足裏のどれだけの広さで受けているかです。同じ力でも、受ける面積が半分なら、1か所にかかる圧はおよそ倍になります。足裏の痛みは、たいていこの「集中」で説明がつきます。
足裏は全面で床に触れているわけではない
裸足で濡れた床に立って足跡を見ると、はっきりわかります。接地しているのは踵・足の外側の細い帯・指の付け根の横一列で、土踏まずは床に触れていません。つまり、体重を受ける係は最初から限られています。
足には3つのアーチがあります。土踏まずをつくる内側縦アーチ、小指側を走る外側縦アーチ、そして指の付け根を横に結ぶ横アーチです。内側縦アーチは体重の分散と衝撃の吸収を担当し、横アーチは足裏の血管や神経を圧迫から守りながらバネのように働きます。このアーチが疲れて下がってくると、それまでアーチが逃がしていた荷重が、踵と指の付け根に落ちてきます。
立ち仕事が歩く仕事より足にこたえる理由
意外に思われますが、同じ8時間なら、歩き回る仕事より一か所に立ち続ける仕事のほうが足はだるくなります。ふくらはぎの筋肉が縮んだりゆるんだりするたびに、脚の静脈の血液が上に押し戻されます。これが筋ポンプ作用です。歩けばこのポンプが動き続けますが、立ち止まったままだとほとんど動きません。血液が下に溜まり、水分が血管の外へにじみ出て、むくみになります。
だから足の悩みは、実は2つの別々の問題が混ざっています。
問題1|圧の集中
踵・土踏まず・指の付け根の痛み。
インソールの担当範囲。
問題2|血液と水分の停滞
脚全体のだるさ・むくみ。
インソールはほぼ無力。
ここを混ぜたまま買い物に行くと、必ず外します。むくみを取りたくてインソールを買う人が多いのですが、むくみに効く道具は別にあります。その分業は後半の第10章で扱います。
SECTION 03
【図解1】足裏の圧の配り方|同じ体重でも、痛む場所は変えられる
図1|接地面積と圧の集中の関係
受ける総量(体重)は左右どちらもまったく同じです。変わるのは分け方だけで、支える面が増えるほど、いちばん高い場所の圧は下がります。インソールがやっているのは基本的にこれ一つです。バーの長さは仕組みを示すための模式で、実測値ではありません。
※図は横にスクロールできます
この図の右側が、アーチサポートのあるインソールを入れたときに起きていることです。土踏まずの空間が埋まり、それまで遊んでいた面が荷重の分担に加わる。結果として踵と指の付け根の負担が下がる。やわらかくしたのではなく、係を増やしたのです。
ここが理解できていると、店頭での判断が一気に楽になります。手で押してへこむかどうかは、ほとんど意味のあるテストではありません。見るべきは、土踏まずの部分が自分の足の形に沿って盛り上がっているかです。
SECTION 04
疲れの4要素|インソールが担当できるもの、できないもの
前回、立ち仕事の疲れは4つの束でできていて、効いてくる順番は売り場の説明と一致しない、という話をしました。インソールの文脈でもう一度整理し直します。
| 疲れの要素 | 体に起きていること | インソールの効き | 本当の担当 |
|---|---|---|---|
| 1. ぐらつき | 足元が微妙に揺れ、それを止めるために脚の筋肉が働き続ける | 大きい | アーチと踵の支え |
| 2. 圧の集中 | 踵と指の付け根に荷重が落ち、そこだけが痛む | 大きい | 接地面積の配り直し |
| 3. 重さ | 片足を持ち上げるたびに余計な仕事が増える | ほぼゼロ | 靴そのものの重量 |
| 4. 衝撃 | 着地のたびに踵から突き上げが来る | 中くらい | 靴底の厚みと素材 |
| 番外. むくみ | 血液と水分が脚に溜まり、全体がだるく重くなる | ほぼゼロ | 足首から上への圧迫と、脚を上げる時間 |
※表は横にスクロールできます
この表がそのまま、この記事の誠実さのラインです。インソールが本当に得意なのは1と2で、3にはまったく効かず、むくみにもほとんど効きません。「むくみ対策インソール」という言葉に反応して買っても、脚のだるさは減りません。減らせるのは、足裏の痛みと、その痛みを避けようとして生まれる不自然な立ち方の連鎖です。
逆に言えば、1と2が原因の疲れは、インソール一枚でかなり変わります。夜勤の立ち仕事で「後半になると体重をかける場所を探してしまう」という感覚は、ほぼ2の症状です。そして無意識に体重を外側へ逃がすと、今度は膝や腰が代わりに働きます。第16回で扱った腰痛と足裏の話が地続きなのは、このためです。
SECTION 05
夜勤者だけがズレる前提|足がいちばん膨らむ時間に、まだ立っている
立っている時間が長いほど、脚には血液と水分が溜まっていきます。日勤の人はそのピークが夕方から帰宅後にあたるので、帰って座る、風呂に入る、横になる、という流れで回収されます。ところが夜勤者は違います。
夜勤者のタイムラインで何が起きているか
- 出勤時:起きて数時間なので、足は一日のうちでいちばん細い。この足に合わせて靴を締める。
- 勤務中盤:立ち始めて数時間、足は着実に膨らんでいく。まだ余裕はある。
- 勤務後半から明け:ここが一日の最大値。その最大の状態で、まだ床に立っている。
- 明けの帰宅後:本来なら脚を上げて回収する時間だが、夜勤者はここで「寝る」ことを最優先にする。脚を上げて休む時間は事実上ない。
- 連勤の2日目以降:前日の分が完全には引かないまま、次のシフトが始まる。膨らみの出発点が少しずつ上がっていく。
つまり夜勤者のインソールは、一日の中でいちばん細い足と、いちばん膨らんだ足の、両方で成立していなければならないという条件を背負っています。ここが日勤者向けの解説と決定的に違うところです。
明けに脚を上げる15分をどこで作るか
むくみそのものへの一番安い対策は、実は道具ではありません。横になって脚を心臓より高くする時間です。夜勤明けはそのまま寝てしまいたい時間帯ですが、寝る直前の15分だけ、壁に脚を立てかけるか、クッションを2つ重ねて足首の下に入れるだけで、翌日の出発点が変わります。
これは睡眠の準備動作としても悪くありません。第9回・夜勤明けに眠れないときの対処法で扱ったとおり、明けの入眠を邪魔しているのは高ぶった交感神経です。脚を上げて呼吸を落ち着ける数分は、むくみと入眠の両方に効きます。
SECTION 06
だから「厚みで埋める」は両端で失敗する
足がいちばん細いときと、いちばん膨らんだときの両方で成立させる。この条件を、厚いクッションで満たすことはできません。
厚いクッション型が両端で失敗する仕組み
- 細い足のとき:足と靴の間にすき間が残り、そこにやわらかい素材があるので足が沈んで泳ぐ。かかとが浮き、ぐらつきが増える。
- 膨らんだ足のとき:靴の中の高さをすでに厚みで食っているので、足の逃げ場がない。甲が押され、指先が詰まり、血の巡りが落ちる。
- 結果:勤務の前半は不安定、後半は圧迫。いちばん助けてほしい時間帯に、いちばん邪魔になる。
これに対して、形で支えるタイプは挙動が違います。土踏まずの立体形状が足を下から受け止めるので、足が細いときでも位置が決まり、泳ぎません。そして薄いので、足が膨らんできても高さの余裕を残しています。同じ「疲れにくくする」でも、やり方がまるで違うのです。
もうひとつ、多くの人が見落としている点があります。インソールは足を持ち上げる道具でもあります。入れたぶんだけ、足は靴の中で上に押し上げられます。厚みは足裏を守る一方で、甲側の余裕を確実に削る。この収支を目で見えるようにしたのが次の図です。
SECTION 07
【図解2】靴の中の厚みの収支|足りないのは面積ではなく高さ
図2|靴の中の高さを、何が使っているか
③のように純正を残したまま重ねると、出勤した瞬間からもう余裕がありません。ここに勤務中の膨らみが乗るので、後半はほぼ確実に痛くなります。②のように「抜いて入れ替える」と、同じ支えを得ながら余裕を残せます。
※図は横にスクロールできます
足の悩みで靴屋に行った人が「ワンサイズ上げましょうか」と言われることがありますが、夜勤者の場合、これは半分正解で半分間違いです。大きくすれば高さの余裕は増えますが、細い足のときの泳ぎも増えます。先に試すべきは、サイズを変えることではなく、中身の収支を整えることです。
SECTION 08
大原則1|純正の中敷きは必ず抜く。重ねない
ほとんどの靴には、うすい中敷きが最初から敷かれています。多くは指でつまめば剥がれて取り出せます。接着されていて外せないタイプもありますが、その場合はできるだけ薄いインソールを選ぶのが正解になります。
重ねると起きる4つのこと
- 靴の中の高さが二重に減り、甲が押される。指先が前に押し出されて爪が当たる。
- 足の位置が上がるので、踵が靴のカウンターから浮きやすくなる。歩くたびに踵が抜ける感覚が出る。
- 2枚の間で微妙にずれが起き、日中に少しずつ位置がずれていく。夕方に足裏の違和感として出る。
- 汗が2枚の間にたまり、乾かなくなる。においと蒸れが一段悪化する。
「純正が薄いから重ねても大丈夫だろう」と考えがちですが、靴の中の余裕はもともとミリ単位です。そこに数ミリを足すという話なので、薄い厚いの感覚が当てになりません。
抜いた純正は捨てずに取っておく
2つ理由があります。ひとつは、新しいインソールが合わなかったときに戻せるようにするため。もうひとつは、後で述べるように、安全靴では純正の中敷きそのものが規格の表示を持っていることがあるためです。ビニール袋に入れて靴箱に置いておけば十分です。
SECTION 09
大原則2|安全靴には、市販インソールを入れてよいかの制約がある
ここは知らないと本当に危ない
作業靴・安全靴の日本産業規格では、中敷きを入れた状態で性能試験を行った靴について、中敷きの交換はその靴と同じメーカーが供給する同等品に限ると定められています。業界団体の解説によれば、その理由は、厚い中敷きを入れると靴の内寸が変わって足当たりが生じること、そして静電気帯電防止靴では帯電防止の性能が阻害されることにあります。
さらに重要なのは、中敷きなしの状態で試験された靴に後から中敷きを入れた場合、静電気帯電防止靴などの電気特性だけでなくつま先の防護性能にも影響しうるとされている点です。先芯と中底のすき間の寸法が、まさにその性能の判定条件になっているからです。
現場別に、どう判断するか
| 靴の種類 | 市販インソールの扱い | 現実的な進め方 |
|---|---|---|
| 静電気帯電防止靴 | 原則として不可 | 可燃物や電子部品を扱う現場では性能が命綱。必ず靴メーカーの対応品を使う。多くのメーカーが交換用の静電インソールを出している |
| 規格合格の安全靴 | 原則はメーカー同等品 | まず靴メーカーの交換用インソールを探す。それでも合わない場合は、必ず職場の安全担当に確認してから |
| 規格認定のスニーカー型作業靴 | 靴により異なる | 耐踏抜き性や帯電防止の性能表示がある靴は同じ考え方。表示のない一般タイプなら自由度は高い |
| 先芯なしのワークスニーカー | 自由 | 規格上の制約は基本的にない。好きなインソールを試せる |
| 厨房用の耐滑シューズ | おおむね自由 | 耐滑性能は靴底の話なので中敷きでは変わらない。ただし水が入る前提なので洗える素材を |
※表は横にスクロールできます
自分の靴の等級は、抜いた中敷きに書いてある
規格に合格した安全靴では、規格の表示は靴底と中敷きの踵部分に印字されています。つまり、市販インソールに入れ替えると、自分の靴がどの作業区分でどんな付加的性能を持っているのかが読めなくなります。抜く前にスマートフォンで撮っておくと、次の買い替えのときに役立ちます。この読み方は第32回で詳しく解説しています。
なお、履物を定めるのは事業者側です。会社支給の安全靴に手を加えることに迷いがあれば、勝手に判断せず、安全担当に一言確認するのがいちばん早くて確実です。「足が痛いのでインソールを入れたい」という相談は、転倒災害を減らしたい会社側にとっても悪い話ではありません。
SECTION 10
大原則3|圧迫は足首から上、ゆるめるのは靴の中
ここを混同している解説がとても多いので、丁寧に分けます。
段階的圧迫が効く仕組み
弾性ストッキング、いわゆる着圧ソックスの一部は、足首の圧がいちばん強く、上にいくほど弱くなるように編まれています。この勾配があることで、下に溜まった静脈の血液が上に流れやすくなります。ふくらはぎの筋肉を外から押さえることで、筋ポンプの働きも助けます。効能効果として「静脈血やリンパ液のうっ滞による脚のむくみを緩和する」ことが認められた一般医療機器の区分の製品もあります。
一方、単に脚を細く見せるための着圧タイプは、この勾配設計を持っていないことがあります。「着圧」と書いてあれば全部同じ、ではありません。むくみ対策で選ぶなら、足首からの段階的な圧迫であることが明記されているものを選びます。
靴の中の圧迫は、なぜ逆効果なのか
靴の中で起きる締めつけは、一部分を局所的に押さえるものです。段階的でもないし、方向もばらばらです。甲が押されれば足の甲側を通る血管が圧迫されますし、指先が詰まれば末端の血の巡りが落ちます。冷えれば、余計にむくみます。だから靴の中では「支える」ことはしても「締める」ことはしない。これが原則です。
分業のまとめ
- インソール:足裏の圧の集中とぐらつきを減らす。むくみには効かない。
- 段階的圧迫の靴下:脚のだるさとむくみを軽くする。足裏の痛みには効かない。
- 脚を上げる時間:どちらの道具よりも安く、むくみにはいちばん確実。
- 組み合わせるとき:厚手の着圧ソックスは靴の中の高さを食うので、インソールを薄くして帳尻を合わせる。
注意点として、糖尿病などで足の血流に問題がある場合や、動脈硬化で足先の血流が低下している場合には、圧迫がかえって悪く働くことがあります。持病がある方は、着圧タイプを自己判断で使わず、主治医に相談してください。また、脚のむくみが続く場合は全身の状態を確認したほうがよいこともあります。詳しくは第25章で扱います。
SECTION 11
診断1|痛む場所と現場から、必要な機能を決める
製品を選ぶ前に、自分が解こうとしている問題を確定させます。痛む場所が違えば必要な機能はまったく別物ですし、同じ痛みでも「立ち止まる仕事」と「歩き回る仕事」で正解が入れ替わります。
診断1|あなたの足に必要な機能はどれか
2つ選ぶだけです。いちばんつらい場所と、現場での動き方を選んでください。
問1. シフト後半に、いちばんつらくなるのはどこですか
問2. 勤務中の動き方に近いのはどれですか
上の2問を選ぶと、必要な機能と選ぶべきタイプが表示されます。
踵の「受け皿」を深くする。やわらかさは後回し
立ち止まる仕事で踵が痛むのは、着地の衝撃ではなく同じ一点に体重が乗り続けているからです。ここでやわらかい素材を足すと踵が沈んで左右に転がり、かえって不安定になります。
選ぶべきは、踵をぐるりと囲む深いカップ形状を持つタイプ。踵の脂肪をカップの中に閉じ込め、自然のクッションを働かせるという考え方です。厚みは3ミリ前後で十分に効きます。
踵カップに、衝撃吸収を少し足す
歩き回る仕事では、立ち止まる場合の一点集中に加えて、一歩ごとの突き上げが乗ります。踵のカップ形状は前提として、踵部分にだけ衝撃吸収材が配置されているタイプが向きます。
全面がやわらかいものではなく、踵だけがやわらかく、土踏まずから前は支えが残っている構造を探してください。全面クッションは歩数が増えるほど不安定さが積み上がります。
荷重が増える前提で、へたらない素材を選ぶ
重量物を持つと、そのぶんの重さがまるごと足裏に乗ります。やわらかい発泡素材は数か月で潰れて、支えが消えたことに気づかないまま痛みだけが戻ってきます。
樹脂の芯が入った半剛性タイプか、密度の高い高反発フォームで、踵部分にだけ衝撃吸収材が入っているものを。耐久が性能の一部になる使い方です。
この記事の本命。アーチを支えるタイプ一択
土踏まずや足裏全体が張って痛むのは、アーチを支える組織が長時間働き続けて疲れている状態です。立ち止まる仕事では休む瞬間がないので、外から支えを足す効果がいちばん大きく出ます。
樹脂の芯が入った半剛性タイプ、または立体成型のカップ型。手で押しても土踏まずの盛り上がりが潰れない硬さが目安です。潰れるものは、体重をかけたら消えます。
アーチ支持に、反発を足して歩きを軽くする
歩数が多い場合、アーチは支えるだけでなく、蹴り出しのときにバネとして働きます。ここで低反発の素材を敷くと、そのバネを吸収してしまい、一歩ごとに余計な力が必要になります。
アーチ形状を持ちつつ、素材が高反発側のものを選んでください。押して離したときに素早く戻るかどうかが、売り場でできる唯一の実用テストです。
支えの硬さを一段上げ、耐久を優先する
体重に荷物の重さが加わる状態では、やわらかいアーチ支持は簡単に沈みます。沈んだ支えは支えではありません。樹脂の芯がしっかり入った半剛性タイプが基本になります。
最初は「硬い」と感じるはずですが、それは支えが効いている証拠でもあります。1週間ほどかけて短時間から慣らすと、多くの場合は違和感が消えます。それでも痛むなら、支えの位置が足に合っていません。
前足部の一点集中。小さなパッドが効く
指の付け根の横一列が痛む、そこにタコができる、しびれる。これは横アーチが下がって、本来なら床に触れないはずの中央の骨の先端が接地している状態です。立ち止まる仕事では、そこに体重が乗りっぱなしになります。
効くのは全面クッションではなく、痛む場所のわずかに手前に置く小さな盛り上がりです。中足骨パッドと呼ばれるもので、骨と骨のあいだを押し広げて、圧が集中する場所を分散させます。第17章で位置の決め方を扱います。
パッドに加えて、蹴り出し時の圧を逃がす
歩数が多いと、指の付け根には立位の荷重に加えて、蹴り出しのたびに強い圧がかかります。中足骨パッドを前提に、前足部にも薄い衝撃吸収材が入ったものを選びます。
同時に、靴のつま先の形も疑ってください。足の指が横に押されている靴では、何を敷いても解決しません。指が動く幅があるかを先に確認します。
横アーチの支持と、素材の耐久を両立させる
重量物を持つと前足部の圧は跳ね上がります。やわらかいパッドはすぐ潰れるので、密度の高い素材で横アーチを支えるタイプを。潰れて効かなくなったパッドは、ないのと同じです。
つま先に先芯のある安全靴では、そもそも中の高さが限られています。厚みで解こうとせず、形状で解くという原則がとくに効いてくる組み合わせです。
正直に言うと、これはインソールの担当ではありません
立ち止まる仕事でのむくみは、ふくらはぎの筋ポンプがほとんど動いていないことが原因です。靴の中に何を敷いてもポンプは動きません。効くのは、足首からふくらはぎへ段階的に圧をかける靴下と、意識的に脚を動かすことです。
現場でできる最小の対策は、1時間に1回、かかとの上げ下げを10回。持ち場を離れられなくてもできます。インソールに求めるのは、それとは別に足裏の痛みを減らすことだと切り分けてください。
歩いているのにむくむなら、靴の圧迫を疑う
歩き回っているならふくらはぎのポンプは動いているはずです。それでも脚が重いなら、靴のどこかが血の巡りを止めている可能性があります。紐をきつく締めすぎていないか、足首の位置で当たっていないかを確認してください。
厚いインソールを入れている場合は、まずそれを外して1シフト試すのが早い切り分けになります。入れたら悪化した、という順番なら答えは出ています。
荷重と姿勢の両方が原因。休憩の使い方を変える
重量物を扱う現場では、脚に強い負荷がかかる時間と、じっと待つ時間が交互に来ます。この待ち時間に脚を下げたまま立っていると、むくみが一気に進みます。
休憩では座るだけでなく、足を椅子や台に上げる。それだけで戻り方が変わります。インソールはあくまで足裏の痛み担当と割り切って選んでください。
SECTION 12
インソール7タイプ早見表|夜勤の立ち仕事という条件で25点満点採点
製品名で選ぶと、モデルチェンジや終売のたびに情報が使えなくなります。ここでは構造で7つに分類し、夜勤の立ち仕事で使うという前提で5つの軸を各5点、合計25点満点で採点しました。用途が変われば点数も変わる、という前提の表です。
採点の5軸
- 安定:足のぐらつきをどれだけ止めるか。立ち仕事ではここが最重要。
- 圧の分散:接地面積を増やし、一点の圧をどれだけ下げるか。
- 薄さ:靴の中の高さをどれだけ奪わないか。夜勤者にはここが効く。
- 耐久:8時間立ちを繰り返しても、支えがどれだけ残るか。
- 蒸れにくさ:汗を受けたあとの乾きと、においの出にくさ。
| 順位 | タイプ | 安定 | 圧の分散 | 薄さ | 耐久 | 蒸れにくさ | 合計 | いちばん向く使い方 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | ①半剛性アーチシェル型 | 5 | 4 | 3 | 5 | 3 | 20 | 立ち止まる時間が長く、土踏まずが張る人 |
| 2位 | ②立体成型カップ型 | 4 | 5 | 3 | 4 | 3 | 19 | 踵と土踏まずの両方がつらい人 |
| 3位 | ③高反発フォーム型 | 3 | 4 | 3 | 4 | 3 | 17 | 歩き回る時間が長く、脚が重くなる人 |
| 3位 | ④極薄・高機能素材型 | 2 | 2 | 5 | 4 | 4 | 17 | 安全靴で中の高さに余裕がない人 |
| 5位 | ⑤ゲル部分配置型 | 2 | 4 | 4 | 3 | 2 | 15 | 踵か前足部の一点だけが痛む人 |
| 6位 | ⑥消臭・調湿特化型 | 1 | 1 | 5 | 2 | 5 | 14 | 痛みはないが、においと蒸れがつらい人 |
| 7位 | ⑦フラット厚型クッション | 1 | 3 | 1 | 2 | 2 | 9 | 短時間の作業や、底の薄い靴の底上げ |
| 参考 | オーダーメイド・熱成形 | 5 | 5 | 3 | 5 | 3 | ー | 市販品を試しても解決しなかった人 |
※表は横にスクロールできます
この表の読み方
両立しにくいのは「支えの強さ」と「薄さ」です。しっかり支えようとすれば形状が必要になり、形状には高さが要ります。逆に、薄さを極めたタイプは支えを諦めています。だから3位が正反対の2つで並んでいるのは偶然ではなく、靴の中にどれだけ余裕があるかで正解が入れ替わることを示しています。
そして7位のフラット厚型が、売り場でいちばん目立つ形であることも押さえておいてください。立ち仕事の8時間という条件では、いちばん買われている形がいちばん向いていません。
SECTION 13
7タイプ詳細|どれが自分の現場に合うか
踵から土踏まずにかけて、硬めの樹脂やそれに準じる素材の芯が入っているタイプです。表面には薄いクッションが貼られていますが、本体はあくまで芯のほう。手で土踏まずを押しても、簡単には潰れません。
立ち止まる時間が長い夜勤者にとって、これが基本形です。足の位置が決まるのでぐらつきが減り、アーチを支える組織の働きぶんを肩代わりします。しかも芯が潰れないので、半年経っても支えが残ります。
弱点は、慣らしが必要なこと。最初は土踏まずに硬い感触があり、人によっては数日違和感が続きます。初日から8時間使わず、まず4時間から始めてください。それと、芯があるぶん厚みはゼロにはできません。安全靴で余裕がない場合は次点を検討します。
立ち止まる仕事に最適へたりにくい慣らし期間が要る余裕のない靴には入らない
踵を囲む深い受け皿と土踏まずの盛り上がりが、一体で成型されているタイプ。素材は発泡素材が中心で、①より全体にやわらかいぶん、あたりが穏やかです。
踵の受け皿が深いことに意味があります。踵の下には脂肪の層があり、これがもともと優秀なクッションなのですが、平らな面の上では横に逃げてしまいます。カップで囲うと逃げ場がなくなり、本来の厚みで働きます。自前のクッションを効かせ直すという発想です。
踵と土踏まずの両方がつらい人、①を試して硬すぎると感じた人の受け皿になります。弱点は耐久で、発泡素材が主役なぶん①より早く潰れます。
踵と土踏まずを同時に当たりがやわらかい①より寿命は短い
押すと沈むが、指を離すとすぐ戻る素材でできたタイプ。ゆるやかなアーチ形状を持つものが多く、①ほどの硬さはありません。
歩き回る仕事で本領を発揮します。沈んで戻るときに力を返してくれるので、一歩ごとの負担がわずかに軽くなり、それが1万歩積み上がると体感になります。逆に立ち止まる仕事では、支えの強さが①②に届きません。
売り場での見分け方は簡単で、親指で強く押して離したときに、跡が残らず一瞬で戻るか。数秒かけてゆっくり戻るなら低反発で、これは⑦のグループです。
歩数が多い現場向き脚が軽く感じやすい立ち止まりには支えが弱い
1ミリから2ミリ程度で、薄いのに衝撃を受け流す素材を使ったタイプ。アーチの支えはほとんどありませんが、靴の中の高さをほぼ奪わないという一点で強い価値があります。
先芯の入った安全靴、規格上の理由で厚いものを入れられない靴、もともとぴったりで余裕がない靴。こうした条件では、これしか選択肢がないことがあります。そして夜勤者の場合、勤務後半に足が膨らむぶんの余白を残せるという意味でも合理的です。
「支えないなら意味がないのでは」と思うかもしれませんが、そうではありません。純正の薄い中敷きと入れ替えるだけで、足裏に届く突き上げの角が丸くなります。支えが要らない人には、これが最も失敗しにくい選択です。
どんな靴にも入る失敗しにくいアーチの支えは期待できない
踵や前足部など、痛む場所にだけ透明なゲルが埋め込まれているタイプ。全面ではなく部分に置くという設計自体は理にかなっていて、狙った場所の圧はきちんと下がります。
ただしゲルは重く、汗を吸わず、面としての支えを持ちません。踵だけ、あるいは前足部だけが痛いと原因がはっきりしている人には効きますが、足裏全体の疲れには届きません。
また、ゲル部分と周囲の段差が大きい製品では、その段差自体が新しい圧のポイントになることがあります。試すなら、段差がなだらかなものを選んでください。
一点集中の痛みに効く重い・汗を吸わない全体の疲れには届かない
活性炭や羊毛、抗菌加工の繊維などを使い、汗とにおいを引き受けることに全振りしたタイプ。薄く、支えはほとんどありません。
足裏に痛みはないが、においと蒸れが本当につらいという人には、これが正解になります。夜勤の8時間に加えて通勤時間まで同じ靴を履き続ける人にとって、においは軽視できない実務問題です。
弱点は寿命の短さで、汗を吸って役目を果たす道具なので、消耗品として割り切る必要があります。支えのあるインソールとは併用できません。どちらか一方です。
においと蒸れに全振り薄い支えはない交換が早い
低反発の発泡素材を全面に厚く使った、いちばん見かける形。押すとゆっくり沈み、じわじわ戻ります。手に取った瞬間の感触は、間違いなく7タイプで最良です。
しかし立ち仕事の8時間という条件では、評価が反転します。沈み込みが安定を削り、厚みが靴の高さを奪い、低反発素材は体温で柔らかくなるので勤務が進むほど沈みが深くなる。勤務後半、いちばん助けてほしい時間に、いちばん性能が落ちるタイプです。
使いどころがないわけではありません。底の薄い靴の底上げ、短時間の作業、あるいは移動だけの日。8時間立ち続ける日の主力にはしない、という位置づけが妥当です。
店頭の感触は最良安定を削る厚みを食う後半ほど沈む
足の形を採って作る、あるいは加熱してその場で足に合わせるタイプ。支える位置が自分の足に一致するので、原理的にはいちばん効きます。
市販品を2つ3つ試しても解決しない、痛みが長く続いている、左右で足の形が明らかに違う。こうした場合は、こちらへ進む価値があります。
ただし、痛みが強い場合や長引く場合には、まず医療機関で足の状態を診てもらうのが順番です。医師の判断のもとで治療用の装具が作られることもあり、その場合は市販品とは扱いが別になります。道具を増やす前に、原因を確かめるほうが結果的に早いことがあります。
支える位置が正確費用と時間がかかるまず受診という順番も
立ち止まる時間が長い人へ
半剛性アーチシェル型(1位・20点)
土踏まずが張る、シフト後半に足裏全体が痛む、ほぼ同じ場所に立ち続ける。この3つが当てはまるなら、まず試す価値がいちばん高いタイプです。純正の中敷きを抜いてから入れること、初日は4時間程度から慣らすこと。この2つを守れば、失敗はかなり減ります。
SECTION 14
素材の読み方|低反発・高反発・ゲル・樹脂の違いは、戻り方に出る
パッケージの素材名は、メーカーごとに呼び方が違って比べにくいものです。ただし挙動は4つに整理できます。売り場で確かめる方法もそれぞれ違います。
| 素材 | 押したときの挙動 | 得意なこと | 立ち仕事での弱点 |
|---|---|---|---|
| 低反発ウレタン | ゆっくり沈み、ゆっくり戻る | 圧の分散。あたりがやわらかい | 沈みが安定を削る。体温で柔らかくなり、勤務後半ほど沈む |
| 高反発ウレタン・弾性素材 | 沈むが、離すと一瞬で戻る | 衝撃を受けつつ力を返す。歩きが軽くなる | アーチを支える力は形状しだい。素材だけでは支えにならない |
| ゲル・シリコン | 指が沈み込み、周囲が盛り上がる | 一点の強い圧を逃がす | 重い。汗を吸わない。段差が新しい圧点になることがある |
| 硬質樹脂・繊維強化材 | ほとんど沈まない | アーチを支え続ける。長く潰れない | 合わない位置に当たると痛い。慣らしが要る |
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売り場でできる3つのテスト
- 戻りテスト:親指で強く押して離す。一瞬で戻れば高反発、跡が残ってゆっくり戻れば低反発。
- アーチ潰れテスト:土踏まずの盛り上がりを親指で押す。簡単に潰れるなら、体重をかけたときにも潰れます。支えとしては期待できません。
- ねじれテスト:両端を持って軽くひねる。ぐにゃりとねじれるものは、足の左右の傾きを止められません。
この3つはどれも10秒で終わります。手で押したときの気持ちよさは、8時間後の快適さとほとんど関係がありません。確かめるべきは「戻るか」「潰れないか」「ねじれないか」です。
SECTION 15
厚みの選び方|夜勤者にとって、薄さは性能である
厚みの目安
| 厚み | できること | 向く靴 |
|---|---|---|
| 約1ミリから2ミリ | 突き上げを丸める。支えはほぼなし | 先芯入りの安全靴、ぴったりで余裕のない靴 |
| 約3ミリから4ミリ | アーチ支持と踵カップが成立する下限 | ほとんどの作業靴。夜勤者の標準はここ |
| 約5ミリから6ミリ | 厚めの支えとクッションを両立 | もともとゆとりのある靴、ハーフサイズ大きい靴 |
| 約8ミリ以上 | 底上げが主目的になる | 底が薄い靴の補強。8時間立ちの主力には向かない |
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意外に思われるかもしれませんが、アーチを支えるのに厚みはほとんど要りません。土踏まずの盛り上がりは足の形に沿って高さが出るだけで、踵と前足部の下は薄いままでよいからです。厚いインソールが厚いのは、多くの場合クッションのためであって、支えのためではありません。
前後で厚みが違うタイプに注目する
よくできた製品は、踵側が厚く、前足部に向かって薄くなっていく形をしています。これには理由があって、指の付け根から先は靴がいちばん狭くなる場所であり、ここに厚みを足すと真っ先に窮屈さが出るからです。パッケージの側面写真で、前が薄くなっているかを見てください。
逆に、前から後ろまで同じ厚みの板状のものは、前足部で高さを無駄に食います。夜勤者にとってはこれが最後に効いてきます。
SECTION 16
アーチの高さ|合わないと、支えるどころか痛みの原因になる
アーチサポートは「高いほど効く」ものではありません。自分の土踏まずより高い支えを入れると、そこが一点の圧になって、逆に痛くなります。低すぎれば何も起きません。
自分のアーチの高さを知る簡単な方法
- 足の裏を軽く濡らし、乾いた床や新聞紙の上にまっすぐ立つ。
- 足を上げて、残った跡を見る。
- 土踏まずの部分がほとんど写らないなら高めのアーチ、外側の帯が広く写るなら標準、足裏全体がべったり写るなら低いアーチです。
| アーチの高さ | 起きやすいこと | 選び方の方向 |
|---|---|---|
| 高め | 接地面積が最初から狭く、踵と前足部に圧が集中しやすい | 圧の分散を優先。土踏まずを埋める形状で接地面積を増やす |
| 標準 | 長時間の立位でアーチが下がり、夕方に張りが出る | 支えの強さを優先。半剛性タイプが合いやすい |
| 低め | アーチが落ちて内側に倒れ、足首から膝まで影響が出やすい | 倒れ込みを止める硬さと、踵を囲むカップの深さを重視 |
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こうなったら、そのアーチは合っていない
- 土踏まずの一点だけが、押されるように痛い
- 装着すると足が外側に押し出される感じがする
- 1週間の慣らしを終えても違和感が消えない、または悪化している
- 足首から膝の内側に、これまでなかった痛みが出た
この場合は使用をやめて、支えの低いものに替えるか、専門的に足の形を見てもらう方向に切り替えてください。我慢して慣らすものではありません。
SECTION 17
前足部が痛いとき|小さなパッドという、いちばん効率のいい解
指の付け根の横一列が痛む、そこにタコができる、指がしびれる。この訴えは立ち仕事でとても多く、そして全面クッションではまず解決しません。
何が起きているのか
指の付け根を横に結ぶ横アーチは、本来ドーム状になっていて、床に触れるのは親指側と小指側の端だけです。このドームが下がると、中央の骨の先端が床に当たるようになります。これが開張足と呼ばれる状態で、前足部の圧が上がり、皮膚が硬くなり、骨と骨のあいだを通る神経が挟まれてしびれが出ることもあります。
効くのは「痛む場所」ではなく「その手前」
ここが最大のポイントです。中足骨パッドと呼ばれる小さな盛り上がりは、痛む場所の真下ではなく、指の付け根よりわずかに踵側に置きます。下がったドームを手前から持ち上げることで、骨の先端が床から離れるからです。
位置の決め方
- 座って足裏を触り、指の付け根のいちばん出っ張っている骨を探す。
- そこから指1本ぶん踵側に戻った位置が、パッドの中心の目安。
- 貼って剥がせるタイプなら、1シフト履いて、痛みの出方で前後に微調整する。
- 痛む場所の真下に置くと、逆に押されて悪化します。迷ったら少し手前に。
アーチサポート付きのインソールには、この盛り上がりが最初から成型されているものもあります。ただし位置は平均値なので、自分に合わない場合は貼るタイプで調整するほうが確実です。
なお、しびれが強い場合や、指の付け根から指先に向かって電気が走るような痛みがある場合は、パッドで様子を見るより先に整形外科で相談してください。
SECTION 18
踵が痛いとき|受け皿と衝撃吸収は、別々の仕事
踵の痛みには2つの原因が混ざっています。ひとつは着地の突き上げ、もうひとつは踵の脂肪が横に逃げて、クッションとして薄くなっていることです。前者は衝撃吸収材の担当、後者は形状の担当で、必要なものが違います。
歩くと踵に響く
着地の突き上げが原因。
踵部分の衝撃吸収材が効く。
立ちっぱなしで痛くなる
脂肪が横に逃げている。
深いカップ形状が効く。
座った後の一歩目が鋭く痛い
足底腱膜への負担の可能性。
第21章と第25章を参照。
深い受け皿が効く理由
踵の下には、蜂の巣のような構造の脂肪組織があります。これは体重の衝撃を受けるために備わったもので、うまく働けばどんな人工素材よりよくできています。ところが平らな面の上に立つと、この脂肪が横方向に押し広げられて薄くなります。踵をぐるりと囲むカップ形状は、この逃げを止めます。
だから踵の痛みに対して、やわらかい素材を足すより先に、囲う形を試すほうが理にかなっています。しかも形状は潰れませんが、素材は潰れます。
やってはいけないこと
踵の下にだけ厚いパッドを入れて底上げするやり方は、一時的には楽になりますが、踵の位置が上がるぶん靴の中で踵が浮きやすくなり、歩くたびに擦れます。踵を上げるのではなく、囲む。これが原則です。
SECTION 19
厚み収支シミュレーター|そのインソール、その靴に入りますか
買う前に確かめられるのは、実は「入るかどうか」だけです。ここで超過が出るなら、どんなに良い製品でも8時間後には痛みの原因になります。数値は目安で、あくまで構造を確かめるためのものです。
靴の中の高さは足りているか
5つ選ぶと、勤務後半の状態で計算します。初期値は「よくある失敗」の設定になっています。
問1. 純正の中敷きはどうしますか
問2. 入れるインソールの厚みは
問3. 勤務中に履く靴下は
問4. シフト後半の足の膨らみ方は
問5. その靴の履き心地は、朝の時点で
使う高さの合計
ーミリ
靴に残っている高さ
ーミリ
残り
ー
占有率
ーパーセント
ー
ー
初期設定は「純正を残したまま5ミリを重ねる」という、最も多い失敗です。まず問1を「抜いて入れ替える」に、次に問2を「約3ミリ」に変えてみてください。同じ靴・同じ足のまま、収支が反転します。買い替えるべきは靴ではなく、入れ方だったというケースは珍しくありません。
SECTION 20
診断2|靴のタイプ別・処方ナビ
同じ悩みでも、履いている靴によって選べるものが変わります。規格の制約、靴の中の余裕、洗えるかどうか。ここまでの内容をまとめて、現実的な選択肢に落とし込みます。
診断2|あなたの靴で、いま選べるもの
2つ選ぶと、その組み合わせでの現実的な進め方が出ます。
問1. 勤務中に履いているのは
問2. いちばん解きたい問題は
上の2問を選ぶと、進め方が表示されます。
まず靴メーカーの交換用インソールを探す
規格合格の安全靴では、中敷きの交換はその靴と同じメーカーの同等品に限るとされています。多くのメーカーが、支えのしっかりした交換用インソールを純正で用意しています。ここを探さずに市販品へ行くのは、順番として損です。
見つからない場合、または合わない場合は、職場の安全担当に確認したうえで検討します。静電気帯電防止靴の場合は、対応品以外は使わないでください。
厚みではなく、部分パッドで逃がす
先芯の入った靴は、つま先側の高さがとくに限られています。全面を厚くする方向は選べません。狙うのは、痛む一点だけを対象にした薄いパッドです。
前足部なら中足骨パッド、踵なら薄い衝撃吸収パッド。純正の中敷きの上に貼るのではなく、下に貼ると、足裏に段差が直接当たらず違和感が減ります。ただし規格上の扱いは、担当に一言確認を。
靴の側で解く。中敷きは触らない
規格の制約がある靴では、消臭タイプへの入れ替えはおすすめしにくい選択です。かわりに、靴の外側で解きます。二足を交互に履いて完全に乾かす、勤務後に中を拭く、靴用の乾燥剤を入れる。
効果がいちばん大きいのは二足ローテーションです。汗を吸った靴が乾くには丸1日以上かかるので、毎日同じ靴を履く限り、中敷きだけを替えても追いつきません。
半剛性アーチシェル型が第一候補
スニーカー型の作業靴は、甲被の素材に自由度があるぶん、中の余裕も比較的あります。純正の中敷きを抜けば、3ミリから4ミリの支えのあるタイプがきちんと入ります。
ただし帯電防止や耐踏抜きの性能表示がある靴では、規格合格の安全靴と同じ考え方をしてください。箱か中敷きの表示を確認してから決めます。
立体成型カップ型で、面を増やして逃がす
一点集中を解くいちばん確実な方法は、接地面積を増やすことです。踵の受け皿と土踏まずの盛り上がりが一体になったタイプなら、踵と前足部の両方の圧が同時に下がります。
それでも一点だけ残るなら、そこに部分パッドを足す。面で下げてから、点で詰めるという順番がいちばん失敗しません。
消臭・調湿特化型に入れ替えられる
規格の制約がなければ、活性炭や羊毛を使ったタイプへの入れ替えが素直に効きます。薄いので靴の中の余裕も減りません。
ただし消耗品です。汗を吸う役割なので、数か月で交換する前提で買ってください。支えのあるインソールとは両立しないので、痛みもあるなら支え優先にして、においは靴のローテーションで解きます。
長靴の中は動くので、まず滑り止めから
長靴や厨房用シューズは、足を締める構造がないぶん、中で足が前後に動きます。この状態で支えのあるインソールを入れても、支えの位置が足とずれて効きません。
先に、裏面に滑り止めのあるインソールか、動かない厚みの靴下で足を固定してください。そのうえで、洗える素材の立体成型タイプを検討します。
水が入る前提で、洗えるものだけを選ぶ
厨房や水を使う現場では、インソールは必ず濡れます。吸水して乾かない素材を入れると、圧の分散より先に不衛生さが問題になります。
選ぶなら丸洗いできて速く乾くもの。ゲルタイプは水に強い一方で汗を吸わないので、この現場に限っては相性が悪くありません。予備を1組持ち、交互に乾かすのが現実的です。
中敷きより、乾かす手順を作るほうが早い
長靴は構造上いちばん蒸れます。消臭インソールを入れても、湿気の総量に対して力不足です。勤務後に必ず中敷きを取り出して別々に乾かす、これだけで大きく変わります。
白癬菌は高い湿度を好み、皮膚に付いてから増え始めるまでにはある程度の時間があるとされています。毎日きちんと足を洗って乾かすことが、いちばん安い対策です。
自由度が最も高い。半剛性タイプを試す価値がある
私物のスニーカーなら規格上の制約はありません。純正の中敷きを抜いて、樹脂の芯が入った半剛性タイプを入れられます。夜勤の立ち仕事という条件では、これが最も期待値の高い組み合わせです。
注意点は、スニーカーの純正中敷きは厚めのことが多いという点。抜いた純正と同じくらいの厚みのものを選ぶと、履き心地が大きく崩れません。
全面で下げてから、残った一点をパッドで詰める
立体成型カップ型で踵と土踏まずを受け、それでも残る一点に部分パッドを足します。私物なら位置の微調整も自由にできるので、貼って剥がせるタイプで試行錯誤するのが最短です。
通勤にも同じ靴を使うなら、勤務時間と通勤時間の合計で考えてください。8時間ではなく10時間履く靴として設計します。
消臭タイプへの入れ替えと、二足体制
私物なら制約がないので、活性炭や羊毛を使ったタイプに素直に入れ替えられます。ただし1日履いた靴が乾くには時間がかかるため、中敷きだけで解決しようとすると力不足になります。
現実的な答えは二足を交互に履くこと。同じ予算で2足買うほうが、1足に高価なインソールを入れるより、においにも足の疲れにも効きます。第32回で扱った二足ローテーションの考え方がそのまま使えます。
安全靴で高さに余裕がない人へ
極薄・高機能素材型(3位・17点)
先芯があって中の高さが取れない、厚いものを入れると勤務後半に締めつけが出る。そうした条件では、支えを諦めて薄さを取るのが正解になることがあります。純正の中敷きと入れ替えるだけで、足裏に届く突き上げの角が丸くなります。会社支給の靴に入れる場合は、事前に安全担当への確認を。
SECTION 21
「朝の一歩目が痛い」が夜勤者には出ない|だから自分の症状だと気づけない
足底腱膜は、踵の骨から足の指の付け根まで扇状に広がる丈夫な組織で、縦のアーチを保つ役割を担っています。長時間の立ち仕事や歩行で負担が重なると、踵の骨に付く部分に細かな傷や変性が起きて痛みが出ます。日本足の外科学会の資料でも、長時間の立ち仕事や歩行、体重の増加、靴の不適合などが背景として挙げられています。
「朝」の正体は時刻ではなく状態
なぜ起床直後に痛むのか。寝ているあいだは足に体重がかからないので、組織が縮んだ状態で固まります。そこへ急に全体重が乗るから、鋭い痛みが走る。つまり条件は「朝であること」ではなく、「長時間、足に体重をかけていなかったこと」です。
この読み替えをすると、夜勤者の場合はこう出ます。
- 昼に寝て、夕方に起きて踏み出す最初の一歩が鋭く痛む
- 休憩や仮眠で座っていたあと、立ち上がって歩き出す一歩目が痛む
- 歩いているうちに和らぐが、シフト後半に再び強くなる
- 踵の内側のやや前寄りを指で押すと、はっきり痛む場所がある
とくに2つ目は夜勤者に固有です。第10回で扱った15分の仮眠のあとに踵がズキッとするなら、それは睡眠慣性ではなく足の話かもしれません。
気づいたら、まずやること
足底腱膜への負担に対しては、痛みの軽減と機能の改善を目的としたインソールの使用が保存的な対処のひとつとして挙げられています。踵を囲むカップ形状と、アーチを支える形状の両方を持つタイプが方向として合います。あわせて、ふくらはぎの筋肉が硬いと足底腱膜への負担が増えるため、ふくらはぎを伸ばすストレッチを習慣にする価値があります。
ただし、これは自己判断で治すという意味ではありません。2週間から3週間続けて改善しない、あるいは悪化しているなら、整形外科で診てもらってください。症状が落ち着くまでに数か月かかることも珍しくないとされており、早く相談したほうが結果的に短く済みます。
SECTION 22
交換の目安|インソールは、靴より先に潰れる
「靴はまだ使えるのに、最近やたら足が疲れる」。この現象の正体は、多くの場合インソールのへたりです。靴底の減りは目で見えますが、インソールの潰れは見えません。厚みが1ミリ減っても、見た目はほとんど変わらないからです。
| チェック項目 | 見方 | 判定 |
|---|---|---|
| 土踏まずの盛り上がり | 新品と並べる。写真を撮っておくと確実 | 明らかに低くなっていたら交換 |
| 踵のくぼみ | 踵の位置に、足の形の凹みができていないか | 凹みが定着していたら交換 |
| 戻り方 | 親指で押して離す | 買ったときより戻りが遅ければ寿命 |
| 表面材 | 踵と指の付け根の布地 | 破れて中材が見えたら即交換 |
| におい | 洗って乾かしても残るか | 残るなら素材の内部まで進行している |
※表は横にスクロールできます
寿命はタイプによって大きく違う
樹脂の芯が入った半剛性タイプは、芯そのものはなかなか潰れません。先に寿命が来るのは表面のクッション材や布地のほうです。逆に、発泡素材が主役のタイプは中身から潰れます。「支えている部分が何でできているか」が、そのまま寿命の長さです。
いちばん賢い運用
買ったときに、新品の状態を横から撮って残しておく。それだけで、半年後に迷わず判断できます。写真1枚で、必要のない靴の買い替えを回避できることがあります。
そして、インソールは靴より圧倒的に安い。「足が疲れるから靴を買い替えよう」の前に、まず中身を替える。順番を逆にすると、余計な出費になります。
SECTION 23
蒸れとにおい|1日コップ1杯の汗を、どこで受けるか
足の裏は体の中でも汗腺の密度が高い部位で、両足で1日およそ200ミリリットル、コップ1杯ほどの汗をかくといわれます。夜勤の8時間に通勤時間を足せば、それが1足の靴の中に注がれ続けることになります。
湿気は、痛み以外の問題を連れてくる
- 足の皮膚がふやけて傷つきやすくなり、擦れが起きやすくなる
- 水虫の原因となる菌が好む高い湿度の環境ができる
- 汗を分解する細菌が増え、においが強くなる
- インソールの素材が湿ったまま圧縮を繰り返し、潰れが早まる
1日履いた靴が完全に乾くには、条件によっては数日かかるといわれます。毎日同じ靴を履いている限り、靴の中は乾ききることがありません。ここに消臭インソールを1枚入れても、湿気の総量に対しては力不足です。
効果の大きい順
- 二足を交互に履く。乾かす時間を作れるのはこれだけです。
- 勤務後にインソールを取り出して、靴と別々に乾かす。数秒の手間で乾き方がまるで変わります。
- 毎日足を洗って、指の間まで乾かす。菌は付着してすぐ増え始めるわけではないとされ、毎日の洗浄が現実的な予防になります。
- 吸湿性のある靴下に替える。替えの靴下を1組ロッカーに置き、休憩で替えるのも有効です。
- 消臭・調湿タイプのインソールに入れ替える。1から4をやったうえでの上乗せとして。
順番が大事です。5から始めても効きません。第17回で扱った肌のケアと同じで、生活の側の手順が先、道具はその補強です。
SECTION 24
冬の落とし穴|厚手靴下とインソールを、同時に足さない
冷凍庫や夜間の屋外現場では、足先の冷えが本当につらいものです。そこで多くの人が厚手の靴下を選び、同時に「クッションのあるインソール」を入れます。この組み合わせは、図2で見た収支の観点からすると、いちばん危険なパターンです。
冬の帳尻の合わせ方
- 厚手の靴下を優先するなら、インソールは薄型に落とす。1ミリから2ミリのものに替えます。
- 支えのあるインソールを優先するなら、靴下は標準厚に戻して、保温は別の場所で取る。
- どうしても両方必要なら、その靴では無理だと認めて、冬用にワンサイズ上の靴を用意する。
3つ目は出費が伴いますが、冷凍庫内の作業が日常なら合理的な投資です。同じ靴で夏と冬を通そうとすること自体に無理があります。
足先の保温は、締めつけない方法で取る
血の巡りが止まると、どんな素材でも温まりません。厚みで包むより、ゆとりを残して空気の層を作るほうが結果的に暖かいことがあります。靴の中で指が動く余地があるかどうかを、いちばんの基準にしてください。
冷える現場全体の防寒については、次回の第34回でまとめて扱います。仕事道具・装備クラスターの記事一覧から確認できます。
SECTION 25
インソールでは解決しないもの|受診を考える目安
ここまでインソールでできることを書いてきましたが、道具で対処すべきでない状態があります。夜勤者は生活リズムの都合で受診を後回しにしがちなので、あえてはっきり書きます。
医療機関で相談したほうがよいサイン
- 片方の脚だけが急に腫れた。痛みや熱っぽさ、赤みを伴う
- むくみが休んでも朝になっても引かない、または急に体重が増えた
- 脚のむくみに加えて、息切れや胸の苦しさがある
- 足の裏や指にしびれや感覚の鈍さが続いている
- 踵や足裏の痛みが数週間続く、または強くなっている
- 足に傷や皮膚の変化があり、治りが遅い
とくに1番目と3番目は、道具で様子を見る場面ではありません。早めに医療機関へ。脚のむくみが続く場合、心臓や腎臓など全身の状態が関係していることもあるため、まず内科や血管外科で確認してもらうという順番が挙げられています。
持病がある方への注意
足の血流に問題がある場合、圧迫がかえって悪く働くことがあります。着圧タイプの靴下や、支えの強いインソールを新しく使い始めるときは、自己判断せず主治医に相談してください。足の感覚が鈍くなっている場合は、当たっていることに気づけないまま傷ができることもあります。
それと、夜勤そのものの負荷
足の疲れが取れない背景に、そもそも回復の時間が足りていないことがあります。睡眠が削れれば、どんな装備も追いつきません。第11回・夜勤の健康リスクと対策と第1回・昼間の睡眠を改善する習慣もあわせて読んでみてください。
SECTION 26
やってはいけない8|買う前に、これだけは読んでください
- 純正の中敷きの上に重ねる。この記事でいちばん伝えたいことです。抜いてから入れる。
- やわらかさで選ぶ。店頭の感触は8時間後の快適さを予測しません。戻るか、潰れないか、ねじれないか。
- サイズを合わせずに使う。大きいものを切って使う場合は、必ず純正の中敷きを型紙にする。前から切って、後ろは切らない。
- 初日から8時間使う。支えのあるタイプは慣らしが要ります。4時間から始めて、数日かけて伸ばす。
- 痛む場所の真下にパッドを置く。前足部のパッドは、痛む場所より指1本ぶん手前に置きます。
- 安全靴に確認なしで入れる。規格上の制約があります。とくに静電気帯電防止靴では性能に関わります。
- むくみ対策として買う。むくみは足首から上の担当です。期待する場所が違います。
- 痛みを我慢して使い続ける。1週間の慣らしを超えて痛むなら、それは合っていない証拠です。
切って使うときの唯一の正解
多くのインソールは大きめに作られていて、自分で切って合わせます。このとき踵側を切ってはいけません。踵のカップ形状と、そこからアーチへつながる線が設計の中心だからです。抜いた純正の中敷きを上に重ねて輪郭をなぞり、つま先側だけを、少しずつ切ります。一度に切らず、履いて確かめながら詰めていくのが確実です。
SECTION 27
まとめ|今日決めること
- 今夜、靴から純正の中敷きを抜いてみる。抜けるかどうかを確認するだけで、選べる幅が決まります。抜いた中敷きは撮影して保管。
- 痛む場所を1つに絞る。踵か、土踏まずか、指の付け根か、それとも脚のだるさか。診断1で確認できます。
- 靴のタイプで制約を確認する。安全靴や静電靴なら、まず靴メーカーの交換用インソールを探す。
- 厚みを先に決める。シミュレーターで超過が出ないところまで落としてから、製品を探します。
- 4時間から慣らす。そして1週間後、痛みの出方が変わったかを確かめる。
もし迷ったら、順番はこうです。靴が明らかに合っていないなら靴が先。靴はそこそこ合っているのに疲れるならインソールが先。脚全体がだるいなら、道具より先に脚を上げる15分。
足は、夜勤という働き方をいちばん物理的に引き受けている場所です。第30回の腕時計のときにも書きましたが、道具の多くは「昼に活動して夜に眠る人」を前提に設計されています。インソールも例外ではありません。前提の外にいることを知ったうえで選べば、同じ製品でも結果は変わります。
SECTION 28
よくある質問
まずは同じサイズのまま、純正の中敷きを抜いて入れ替えてください。それで収まるなら、サイズを変える必要はありません。大きくすると高さの余裕は増えますが、足が細い出勤時に靴の中で泳ぎやすくなり、ぐらつきが増えます。厚手の靴下とインソールを両方必要とする冬など、どうしても入りきらない場合にだけ、大きい靴を別に用意するという順番が現実的です。
その場合は、できるだけ薄いインソールを選ぶのが唯一の道です。1ミリから2ミリの極薄タイプなら、重ねても靴の中の高さをほとんど奪いません。厚いものを上に乗せると、出勤した時点で余裕がなくなり、勤務後半に必ず締めつけが出ます。支えが欲しい場合は、部分的に貼るパッドで狙った場所だけを補うほうが現実的です。
規格に合格した安全靴では、中敷きの交換はその靴と同じメーカーが供給する同等品に限るとされています。厚い中敷きを入れると靴の内寸が変わって足当たりが生じること、静電気帯電防止靴では帯電防止の性能が阻害されることが理由として挙げられています。中敷きなしで試験された靴に後から入れた場合、つま先の防護性能にも影響しうるとされています。まず靴メーカーの交換用インソールを探し、それでも合わない場合は職場の安全担当に確認してから判断してください。
アーチの高さや痛む場所に左右差があるのは珍しいことではありません。市販品で対応するなら、支えの強い側に合わせるのではなく、弱い側に合わせて選び、足りない側にパッドを足すという方向が安全です。強い支えを両足に入れると、必要のない側で新しい痛みが出ることがあります。左右差が明らかで市販品では追いつかない場合は、専門的に足の形を見てもらう方向を検討してください。
ほとんど効きません。むくみは、ふくらはぎの筋肉が動かないことで脚に血液と水分が溜まる現象なので、靴の中に何を敷いても筋肉は動かないからです。効くのは、足首からふくらはぎへ段階的に圧をかける靴下、こまめにかかとを上げ下げすること、そして脚を心臓より高くして休む時間です。インソールに求めるべきなのは、足裏の圧の集中とぐらつきを減らすことだと切り分けてください。
使い方によって大きく違うため、期間ではなく状態で判断してください。土踏まずの盛り上がりが明らかに低くなった、踵に足の形の凹みが定着した、押して離したときの戻りが買ったときより遅い。このいずれかが出たら交換です。樹脂の芯が入ったタイプは芯が潰れにくいので長持ちしますが、発泡素材が主役のタイプは中から潰れます。買ったときに横から写真を撮っておくと、迷わず判断できます。
支えのあるタイプなら、初日は4時間程度から始めて、数日かけて通常の勤務時間まで伸ばしてください。足が新しい支えの位置に慣れるまで、土踏まずに違和感が出ることがあります。ただし、1週間の慣らしを終えても違和感が消えない、あるいは痛みが強くなっている場合は、合っていないサインです。我慢して使い続けるものではないので、支えの低いものに替えるか、専門的に相談する方向に切り替えてください。
役割が違うので併用自体は理にかなっています。ただし厚手の着圧タイプは靴の中の高さを食うため、そのぶんインソールを薄くして帳尻を合わせてください。両方を厚くすると圧迫が起き、血の巡りが落ちてむくみも冷えも悪化します。また、糖尿病などで足の血流に問題がある場合や、足の感覚が鈍くなっている場合は、圧迫がかえって悪く働くことがあります。持病がある方は主治医に相談してから使ってください。
踵や足裏の痛みが数週間続く、または強くなっている場合は整形外科での相談をおすすめします。足底腱膜への負担による痛みは、落ち着くまでに数か月かかることも珍しくないとされており、早めに相談したほうが結果的に短く済みます。また、片方の脚だけが急に腫れて痛みや熱っぽさを伴う場合、むくみに息切れや胸の苦しさを伴う場合は、道具で様子を見る場面ではありません。早めに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい
【参考にした主な情報】日本産業規格 安全靴および静電気帯電防止靴の規定、日本安全靴工業会の規格解説、日本足の外科学会の一般向け資料、足のアーチ構造および開張足に関する整形外科領域の一般的な解説、弾性ストッキングの効能効果と一般医療機器としての区分に関する各医療機関および製造者の公開情報、足部の発汗量および靴内環境に関する一般的な資料。
【免責】本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。インソールは足への負担のかかり方を変える道具であり、病気を治すものではありません。効果や感じ方には個人差があります。持病のある方、痛みやしびれが続く方、片足だけの強いむくみがある方は、自己判断で対処を続けず医療機関にご相談ください。規格や製品仕様は改定されることがあるため、購入前に最新の公式情報をご確認ください。

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